2008年09月01日

自分を観る3

………略………
白隠禅師は、「動中の工夫は、静中の工夫に勝ること百千万倍」といいました。工夫ということは、自己がいかに無であるかどうか、一切の万有であるかどうかということを見極めんとする心構えをいっているのですが、動中の工夫は静中の工夫に勝ることが百千万倍だというのです。これをしいて禅的に言うならば公案とでももうしますか、公案とは一つのなぞを解決せざればおかずというような考え、もし自分が無であり、他も無であるということを主張するならば、はたしてそんなものがあるかどうかを自分が一つの概念として持って、それを果たそうとするその心組みを公案と名付けています。そして自分がじっと考えていくなのらば、それは座禅のときに限らん、飯食っておろうが、セッチンに行ってクソたれておろうが、その工夫を続けていくとは静かな座禅に勝ること百千万倍といいます。
しかしそれは口でいえばそれだけですが、なかなかできるものではない。電車にのっても、あっちの顔も見、こっちの顔も見る、出来事もおこるといったふうで、そんなにじっとかんがえられるものではない
。しかし、本当に注意力があるならばそは可能である。
こうして四六時中自己無なりというものが如何にあるかということを念頭におくと、それは自分を殺している姿だということを言っているのです。自己というものは常に瞬時のひまなく起きている。その起きている自己を、念頭にあるものをじっと殺す。その姿はもう自己を殺し尽くしている姿です。
禅では、その殺してなにもかも自己を殺しきった時、初めて自分が無なら無と思うている公案にガチッと合う日があるというのです。これを悟りといっています。自己を殺して、公案と自己がガチッと一つに打ち解けてしまう。そして起きてきたものが悟りである。その悟りは無の公案に徹したものですから、他も自分もないということがそこで初めて力強くわかるわけです。
まず禅の修行の行き方は自己を殺すその殺し方です。それはちらっと瞬時の間自己を殺すことはできます。けれども、長く続けて本当に徹することは、容易ならん時間を要します。そして自己を殺した中から出てきた自己がほんとうの自己だといっているのです。今までの自己はうその自己だった。他についてまわった自己だった。そこからパッと出てきた自分は本当の自己であって、この自己は宇宙のはじめから終わりに至るまで関連した自己だ。われわれ人間は宇宙のなにもののしわざかしらん。ただ両親いうものをかりてでてきてはおりますが、決して両親の中に私があったのじゃない。両親がまだ赤ん坊のときに、私を生む能力も、私の体のタネも何もないはずです。ところが春季発情期に至って、その恋しい、慕わしいという人間の欲望が起きてきて、これが製造した。
 すると赤ん坊は春季発情期以前にはなかったかというと、そうはいえない。あったじゃないか。形の上からいくと、一体人間はどこから生まれてきたか。これはおそらく宇宙が太陽系統からパッと出てきて、この辺でうまいこと宙ブラリンにぶらさがっていて、その中には一切の万物をつくるところの機能があって、その機能が非常に複雑怪奇に集まって出来上がったものが人間である。そう考えてみると、私どもの生命力は宇宙にあるはずだ。その宇宙にあるもの、天何おかいわず、死わかれ、地なにおかいわず、万物生死せしめるもの、これが生命力というか、宇宙の一切のものをつくるのです。
おそらくキリスト教ではこの万物創造のものを「神」というているのじゃないでしょうか。仏教は創造とは申しません。創造以前です。
 この「一機」というもの…これは言葉に出ないのですが、これは仏と名付けているのです。ですからこの仏は宇宙に遍満しているわけです。猫になり、犬になり、牛になり、馬となり、私になる。これは何かの因縁で姿をかりていますが、同じ元素です。仏教では「草木国土悉皆成仏」という言葉がありますが、草も木も猫も杓子も仏である。セッチンのダラ虫も仏であるといっているのはそこなんです。
「悉仏性」と言っていますが、自己は無なりといったところへパッと来た自分というものは、この宇宙の氣息にふれて生きている。これは本当の自己であり、同時に仏であるということです。宇宙に遍満している自分である。ただここに時間、空間をかりて、ある種の因縁が凝結してそういう形をなしている。この私という形のものは消えていくでしょう。けれどもこの消えていくものがすでにこの宇宙には先に遍満しておったものだということがわかります。そうなると自分はない。同時に一切のものがあるということが、あるがままにここに肯定せられます。これを肯定するならば、この世の中をこんない毎日ケンカばかりして騒がしゅうしていることをなんとか救わなければいけない。
つづく
posted by 弘心 at 15:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする