師走も中頃、大阪中之島にある国立国際美術館の
学芸部長をされている島氏から、一通のお手紙を頂戴した。
平成19年12月18日から一般公開されるに先立ち、
関係者に公開される記念式典と開会式に招待いただいた。
島敦彦氏の御子息が私が主催する高槻心身統一合氣道会の会員でした。島氏のご夫人は、ルドルフ・シュタイナーの唱えるシュタイナー教育にも造詣が深く、話をさせて頂いたこと。
子供クラスの修練日には、島氏がいつも付き添って来られていて、夫人からは、「生みの親は、私。育ての親は夫です」などと冗談を言われていたことなど、懐かしく思い出します。
1970年の大阪万博が当美術館の始まりでした。
太陽の塔やお祭り広場のすぐそばに、「万国博美術館」と呼ばれるパビリオンがありました。
国内外から名品を借受展示し、約177万人の入館者があったと言われている。しかし、収蔵品はなく、万博が終わると、万博公園にに建物だけが残った。
万博記念公園時代の国立美術館は、どちらかと言えば、交通の不便が災いして入館者は伸び悩んだ。
77年に収蔵品を持ち、名実ともに4番目の国立美術館として
「国立国際美術館」として名を改め再出発した
そして、大阪の都心・中之島に国内初の全館地下式の美術館として
2004年に新築、移転して今日に至っている。
三十年で大きく変わったもの言えば、コレクションの数である。
現代と近代を軸に、絵画、版画、彫刻、写真など幅広い。
その数、約5700点。
その中から、セザンヌ、デュシャン、ピカソウォーホル、リヒター、藤田嗣治、佐伯祐三、浜口陽三、横尾忠則…など、厳選された400点を展示されている。
是非子供に見せてあげてほしい(高校生以下は無料)。
子供の素晴らしい感性をより研ぎ澄ますには、「本物」
「芸術性の高いもの」を出来うる限り「目」に見みせ、
「耳」に聞かせることです。
ゲーテは、「「耳」は音が創り、「目」は光が創った」といっている。その意味を思慮すべきでしょう。
不思議な縁でもある。万博記念公園に最初の美術館を設計されたのは、京都大学の川崎清教授とのこと。
川崎教授とは、私がT市の総合センター(15階建の当時としては高い建物で行政・教育・文化の施設を持つ複合施設)の建設準備室長として、新しい形態での設計コンペをおこなった時の審査委員長をして頂いた。
当時、新日本建築家協会の事務局長とも相談して専門家による審査委員会を作った。
京大2名、阪大2名、大工大1名、そして当時の助役と市議会の女性議長で構成した。
京都大学の川崎清教授(意匠)、川上貢名誉教授(古典建築)、
大阪大学は鈴木計夫教授(構造)、紙野圭人教授(建築計画)、
大阪工業大学の光埼育夫教授(都市計画)、
助役は現市長の奥本氏、女性議長の村田君江氏(残念ながら女性議長としては、この人以上の見識と手腕と弁舌さわやかもつ人は出ていない)の七名構成。
設計コンペで安井建築設計事務所の作品が一位となり、大林組が工事を担当した。
総事業費は、約160億だったと思う。
特徴は16Fに「ヘリポート」を設置したこと。
空調は人体が出す熱をも利用して、トータルの熱量を配分することにより、電気とガスの最適利用区分を想定して設計した。
建築の主体構造は、東京都庁に似せた「スーパーストラクチャー方式(大架構方式)」を用いたことであろう。
大変勉強させて頂くと共に、川崎清教授にはお世話様になりました。
話がそれた。
この国立国際美術館会館三十年記念展は、島敦彦学芸課長の
努力によるところが大変多い。氏の講演にもその一端が伺えました。
又、当日の記念式典での青木文化庁長官の挨拶からも、
ここに至るまでの苦労が述べられていた。
藤原正彦氏の著書「国家の品格」の中で述べられているように、
「…自然に対する繊細な感受性です。
かって日本に長く滞在した多くの外国人たちは、一様にそのことを指摘しています…自然への繊細な感受性を源泉とする美的情緒が、日本人の核となって、世界に例を見ない芸術を形作っている…」と。
この我が国独特の精神性の追求が様々な形(「悠久の自然と儚い人生」という対比の中に美を感じる、という類まれなる能力…無常観」そして全てを、生き方としての「道」に凝縮させる能力など)として意識することに非常に秀でているのです。
これからの美術館の役割は、日本人としての精神的原点を涵養させるためにも、重要な位置を占めていくものと考えられます。
是非とも、美術館に足を運ばれること、期待いたします。
2007年12月31日
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