「運命を好転するには、全て悪く悪く考えないことである。いいことだけを絶え間なく心に描くことだ」。
以前にも書いた。医学博士の池見酉次郎先生が「バイオフィードバック」という本を出された。その本の中に次ぎのような記述がある。「がん細胞を酸素で包んでしまうと癌細胞が増殖しなくなり、消えてしまう結果も見られた…」という内容のものである。先生はその時、人間の持つ自然治癒力に関心を持たれ呼吸の力を感じられた…。
その後先生は心療内科を創設された。次に先生自身が体験されることになる。
先生は手術の激務、依頼原稿の遅延などで精神的に追い詰められ大量の吐血。レントゲンで調べた結果、手術が必要と判明。不安と焦燥…その時学生時代、神経衰弱にかかったとき、森田療法で治療したことを思い出された。どうせここまできたら仕方のないことと割り切って、逆のことを考えることにした。
生まれて今日までの楽しいことだけを一つ一つ思い浮かべてそのイメージを大きく拡げてみた。毎日毎日そのことを繰り返した。手術の日、弟子たちがやってきて「念のためにもう一度レントゲンを撮らせてください」
やがてレントゲン写真を手にした弟子か困惑した表情でやってきた。
「先生、異常がないのですが…」結局、健全であることが判明。手術することなく退院。まさに「例外的治療」。
病理学的は、主として死体の解剖処理をして考察を進めている。死体はあくまで死体であって物でしかない。
その死体にある内臓の疾患した部分を切って捨てるしかない。したがって今まで胃潰瘍で来た患者さんにはすべて手術をして患部の切除をしたものだ。切除すれば疾患部分はない。無いからもう治りましたと言って、患者さんたちは退院していった。
しかし、本当に治癒したといえるのだろうか、単に悪い部分を切って捨てただけではないか。いうなれば一種の対処療法で、決して原因に対する根本治療とはいえない。先生は改めて過去に退院していかれた患者のカルテを調べてみた。驚いたことにかなりの人たちが、三年から五年後に再び同じ胃潰瘍になっていたという事実がわかった。
生きている人間。患者の体は病んでいるとはいえ、紛れもなく生きているのだ。そして生きている心の持ちようによっては、人間はより健康にいきようとする霊妙な力が働いていることを忘れてはならない。あれほど吐血した自分の胃潰瘍が治ったのは、自分の心の持ち方ひとつだったという事実に、改めて感動をしたという。
身体が健康であっても、心が消極的否定的不健全であれば、やがて身体は健康を失っていく。しかし、心が積極的肯定的健全であれば、身体は健康をとり戻すことになる。
そして心身が健康であり健全であれば、運命も好転すると信じてよい。
あとは未練を残さない。振り返らない。前を向いて、上を向いて機能性を信じ自分に出来ることは何か、そこから新しい希望が生まれる。
「私は生きている」生きている以上は、生きている限り、生き生きと考える方が自然ではないか。
私は今まで、こんな思いで生き抜いてきた……。これからも……。
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